展示日記

開かれたドア

「かわいい〜💕」
「やさしそう〜💕」

ホウちゃん、サクちゃん、シララちゃん、アカネちゃん、マライくん、ルンタくん、山中さん家のサッカー仲間のみんなが言ってくれる。

サクちゃんは、僕らがサッカーをしているあいだでも、ときどき一人で見に行っていたんだ。

興味があるんだ。

サクちゃんは、お姉さんのホウちゃんと二人でクッキーをつくっているからだろう、何かが心に引っかかってきているんだ。
きっと、何に惹かれているのか自分でもよくわかっていない。
今はまだなんとなくなんだ。
彼女が、自分から何か言い出すまで、こちらも黙って見ていよう。

この十日間、僕は馬のレリーフをつくっていた。

馬のお墓が出来るそうで、そのお墓の銘板になるそうだ。
競馬方面からの御注文だった。
それはずいぶんと有名な競争馬のようだけれど、競馬に興味がなかった僕には全くわからないことばかりだった。
僕は、ズブの素人なんだ。
たぶん、馬の専門の方達からみると、求めたいことは果てしなくあるだろう。
求められていることは個体判別が大切で、例えば、流行りの女優さんで言うと、広瀬アリスさん、広瀬すずさん姉妹、お一人お一人の個別の個性を表して、なおかつ、魅力までも表現しなくてはならないってことだ。
正直、そこまでは行けてない。

みんなは、ただただ、馬に興味があって、かわいいとか、やさしそうとか感想を言ってくれている。
つくっているところをずっと見ていたせいもあるし、お父さんが、馬をもらって来るって言ってるせいでもある。
とにかく、みんなにすると、最近、馬が自分達にググッと近付いてきたんだ。
みんなには、ここが入り口なんだ。

僕は僕で、おかげさまで、造形の仕事も彫刻の仕事も区別がなくなった。
「そういえば、俺って、どんな仕事も一生懸命やっているよな。」と気がついてからは、ただただシンプルに一生懸命やっているだけになってきた。
だから、素直な感想がとてもうれしい。
友人の坂東も「衒いの無いのが良い。」と言ってくれる。
ずばり、僕の今の気分を言い当ててくれた。
それにしたって、どこまでやっても、次なる課題は無くならず、というか、よりいっそう、まだまだいっぱいあるんだけれども、今の精一杯はこれなんだ。

久しぶりにタイムトライアルな仕事で、そこのところも没頭出来て良かった。
ギリギリの中で、見出せることがたくさんあった。
時間も予算もギリギリになってから、いろんなところを経巡って、行き着いたのが僕のところってだったってことも、僕にとっては良かった。

とにかく、今回の馬のレリーフからは、得たことがいくつもある。
やらせていただいて、こんなに良かったことはない。

先ず、馬は全くの素人で、そういう世界を知るきっかけを頂いた。
そこから僕自身がもっと自然をよく観なければならないことの大切さを再認識した。
そしてレリーフという形式、加えて円形という形態。
円形画面の特性は、絵画での発見からも見出せてきたから、引き続いて彫刻でも試行出来るってことだ。
レリーフという形式は、彫刻であって、絵画でもある。
レリーフというのは、側面を描写するのにはけっこうたやすいが、他の面を描写するには意図的な形態の圧縮や変形を加わえて、強調や省略を行わなくてはならない。
これには、全体的な形態を把握していないと確信を持って取りくむことが出来ないことがわかった。
ってことは、より触覚を磨くためにものを見たり、触ったりと直接行動を増やして行くべきだろう。
五感六感まで総動員してことに当たるってことになる。
洞窟で、絵を描いていた頃の人間と同じ感覚に近づいていけるってことだ。
だからレリーフは、複雑系を内包していて可能性に満ちている。
そこが非常におもしろい。

山中家のみんなの仲間に入れてもらえることで一番おもしろいのは、なんでもかんでも「自習独学」を通して自分自身のものにしてゆくってところだ。
この体験はとてもおもしろいし、なによりも自分自身の子供の頃を思い出して肯定出来た。
例えば、シーちゃんこと、シララちゃんはついこのあいだ自転車に乗れるようになった。
はじめは、お兄ちゃん、お姉ちゃん達が自転車に乗っているのがうらやましくて、憧れていた。
何度も何度も転んで、擦り傷をこさえて、前歯まで折って(乳歯だったから良かったけれども)乗れるようになった。
その間、誰にも手伝ってもらわなかったし、誰も手伝わなかった。
黙って見ていてくれたんだ。
シーちゃんは、先ず、誰の助けも求めず、自分自身でやっていったんだ。
仮にシーちゃんが助けを求めたら、みんなが助けてくれただろう。
みんな、シーちゃんの力が足らないから出来ないのではなくって、シーちゃんが憧れの道の途中にいることをよくわかっているんだ。
つまり、シーちゃんは絶対に出来るって信じているし、出来るってことがわかっているんだ。
そして、今、シーちゃんがそこにいて感じている喜びを理解しているってことなんだ。
だから、シーちゃんも転んだって、前歯を折ったって、やめたりしないでやり続ける。
少しずつ、少しずつ、何かを体得してゆく。
その瞬間、瞬間がうれしいんだ。
それはたやすくないかもしれない、でも、その一歩一歩を歩む道のりがおもしろいんだ。
そこで手伝だったりして、むやみに、ひとが獲得している喜びを奪ってはいけないんだ。
みんなは、それがわかっているんだ。
乗れるようになってから、今日もシーちゃんは、そこら中を疾走している。
僕が、チェーンに油をちょっと注いだら、自転車が軽くなってグングンどこでも行けるようになってしまった。
「立ちこぎ」まで発見して、山でも谷でも物凄い速さだ。
追いつけない。

だから、シーちゃんはこれからも、憧れたことには、自分自身で近付いてゆくだろうし、獲得することを恐れやしない、むしろ、ずっと道の途中にいて歩み続けられるだろう。
なんでもそうするだろう。

「自転車に乗れた。」だけがゴールではないんだ。

今回、展覧会に来てくださった方々には、心より御礼申し上げます。
ありがとうございました。😊
全く予想もしていなかった方達の来訪からは、次なる課題があると教えて頂きました。
それは、予想外だけれども、予想外ってことは自分の範疇の外にはみ出ているから予想外に思えているだけで、実はベストなものを与えて頂いていることにも気付けた1ヶ月でした。
ここが入り口、ここがドアだと思えて、ほんとうに感謝ばかりです。

ありがとうございます。😊❣️

馬のレリーフ

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