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2011年3月28日(月)〜4月8日(金)「札幌を掘る DIVE DOCUMENT」と題し札幌市役所にて展示を行った。
この展示は、札幌市職員-熊谷直樹氏のふとした興味をきっかけに、動き出し、札幌市琴似に残る北海道最初の屯田兵村の遺構-兵屋について、二十年ぶりに行われた柾屋根葺替え保存修理に伴い、その竣工を記念して企画され、行われた。約半年に渡る取材と準備、数え切れないたくさんの方々の御協力あっての催しとなった。
北海道-札幌の歴史をたどり、ここに暮らす自分たちの足元を見詰め、確かめることが、大きなテーマとなった。内に籠らず、地球規模の繋がりを見つけ出す為に人類史、考古学、地質学等へも取材を深めた。言わば、札幌のアイデンティティを普遍性の中に捉え、個性を抽出し、未来に生きて行く誇りとして確認した催しと言える。
現在、札幌には190万人を越える市民が暮らしている。北海道では、550万人、北海道の約三分の一の人間が暮らす巨大都市だ。この膨大な人々が、今、正に、自分たちの手で、ここをつくりあげていることを互いに思い合えるひとつのきっかけとなればと考えた。
この展示を、単なるグループ展と捉える方もおられたが、実際には、「かたちとして表された物事」と「かたちとして現れて来ない力」のオーケストレーションによって成り立った。また、当初から、思っていたことは、思い付きなどの提案について、可能性の可否判定をするのではなく、全て実行する方向を持つことだった。
「どうしたら出来るのか。」
いつもそれを話し合った。
自分たちの範疇を越える様々な方々や要素によって生まれてくるものに敬意を払い、尊重し、偶然や未知を積極的に受け入れて、混ざり合うところに、何が生まれてくるか。科学反応を強く望み、楽しんだ。
結果、未だ例えることの出来無い「何か」が立ち現れた。しかし、それは、混沌や混迷といったアナーキーなものではなく、確かに多くの共感を生むものとなった。
人としての仁義や礼節に基づいた発言や行動は、必ず実りへと繋がるのだ。そして、私自身も含めた、参加された方々は、それぞれ、御自分のされていることの根もとを確認され、よりその営みを磨かれることとなった。普段の自身の日常の中にこそ、「美しさ」が輝いていることを再認識したからだ。それが、この催しの最大の成果だと捉えている。
自らの足元、出自、歴史を深く見詰めることは、振り返って、今を生きる力となり、そこから、新たな活力が芽吹く。
「生命あるものは、かならず芽を吹き、生きる。」
これもまた、恩人から頂いた言葉だ。
さて、とどまることなく、歩みを進めよう。
展示参加者リスト(順不同、敬称略)
絵手紙:札幌市立琴似小学校4年生、琴似屯田子孫会
彫刻:唐牛幸史
板書:田山修三
クレイアニメ:キュウイフイルム
彩色写真:伊藤潤
短歌:山田航
篆刻:酒井博史
建築模型:佐々木泰之
テーマ曲:カポウ・古舘賢治・Toy Toy